原色の輝きは無垢のままに
移転10周年につき開封させていただいたボトルの紹介の続きです。
樽出原酒 山崎15年(蒸留年表記無し)56% シリアルナンバー付き
1979〜1995年までの蒸留年のものなら当時はサントリー蒸溜所に赴けばお土産品としていわゆる”ヴィンテージカスク”が当時は販売されていました。 あの時は自分のバースデーヴィンテージが無かったので購入意識が沸かなかったのを覚えています。
その後、1995年から贈答品及びサントリーの蒸溜所にてお土産品の一つとして販売されていた限定ボトリングがこの樽出原酒です。(同時期に白州の樽出原酒もありました)。これは、山崎蒸留所にて熟成された秘蔵の樽だけをボトリング、一瓶ずつ製造番号を記した限定版というのがキャッチフレーズで当時は販売されていました。
しかし、当時のウイスキー業界にとっては冬の時代であり本当にこんなに素晴らしい原酒があったとしても業者は在庫をどのように販売するかに知恵を絞る毎日だったようです。特に日本のウイスキー業界には厳しい時代だったと思います。
今や、このようなボトルはオークションアイテムとして多くの愛好家及びバイヤーの方々の心を鷲掴みにしています。この現状には個人的にはかなりのギャップを感じるものです。
・・・とはいっても当時のボクも実は例にもれずにこのボトルに興味を示さなかったのですが。 何故なら、このボトルを購入するお金で当時はマッカラン18年やグレンファークラス21年などがいわゆるビックネームが安価で購入できた時代だったので気持ちは断然スコッチウイスキーに傾いていたのです。一時期は浴びるようにボウモア30年を飲んでいた夜もありました。本当に良い時代でしたが、こういった桂酒の存在をないがしろにもしていました。
それから時代は2000年に移り変わり流行も変化していく中、酒類業者から一本の電話がありました。 ”山崎の原酒をまとめて買ってくれませんか”と。
ボクは当時からいつも余裕のない経営をしていたのでまとめては購入はできませんでしたが、その時には酒販店との付き合いもあって何本かは譲っていただきました。
今でも覚えていますが、こういったウイスキーは当時売れ行きが良くなかったものでした。売れ筋は店舗毎に違いはあると思いますがとにかく当店ではこういったものよりブレンデットウイスキーの響の方が売れたものでした。それでも個人的に努力をして何とか売ってみましたが空虚感が募る毎日が続くばかり。
今ではこれを目当てに海外からもお客様がいらっしゃる時代となりました。価値というものはどこで変わるか分からないものですね。
このボトルを見ると時代の変化を個人的に感じます。香りは優しく木の匂いがして味わいもとてもスムースで上品。日本のウイスキーの良さがこのボトルには一滴入っています。そして続けることの困難の味もします。 今の日本のウイスキーの現状が目標でつくり手の方々が努力をされていたのかは正直ボクには分かりません。ただ一つ言えることがあるとすれば、それはもし明日が来なくても種を蒔くことを止めないことだろうと思います。
よければ是非とも一度はこのウイスキーをご賞味いただけると幸いです。